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尾張町にある『みかわや|コトバコ』を楽しもう!! 村上製本編
更新日:2021年4月15日

浜松市街地のメインストリートの1つ。
遊楽街を北に徒歩10分ほど。
商店街の音から徐々に生活の音が聞こえる町、尾張町の交差点の角にみかわや|コトバコはあります。
かつてこの場所で生活雑貨を扱うお店だった三河屋さんが空き家になり、その三河屋の屋号を受け継いて新たにコトゴトが起こる場所(箱)になるようにとリノベーションされた複合店舗です。
通りに面した大きなガラス貼りの入り口は、尾張町の歩道を歩く人の雰囲気を感じたり、「何かしら」と覗く人もいたりと、昔から今も続く生活のコトゴトが起こる場所。スローペースでハイペース( 皆さん自分の時間を保ちながらも、面白い人や事が次々に集まることで日々何か起こる )な、浜松で気になる場所の一つです。

ユニークなのは、みかわや|コトバコ で活動する店舗。
(店舗というキチっとした区分けもないのですが)
食堂・製本・野菜市・英会話教室・家づくり相談室・プログラミング学習喫茶店・お菓子屋さん・コーヒー屋さん・Podcast(インターネットのラジオのようなもの)・本棚。
あるいは常に新しい事が始まっている場所なので、この記事を読んでいただいている時には別な試みがされているかもしれませんが、普段では交わらないような異業種の人が交わることで化学反応を起こす街角実験室のような施設です。

みかわや|コトバコ を出入りする人たち。
それはお店の方だけでなくお客さんも含めて、多面体のようで、色々な見方をすることで沢山の発見があるような場所だと思います。
今回は村上製本さん、おやつの紀行さん、KIZUKIの食堂さんを取材させて頂きました。
長編になりましたので『みかわや|コトバコ』を楽しもう!!というタイトルで、前・中・後編に分けて紹介をさせていただこうと思います。
[村上製本 編]
みかわや|コトバコ で活動をされている店舗の中で、製本という2文字が「?」となる方は多いのではないでしょうか。
こちらには村上亜沙美さん(村上製本)というデザイナーで製本家の方がいらっしゃいます。

写真 鈴木陽一郎
子供の頃に本が友達だった村上さんは、本の勉強をするためにイギリスの大学に留学されました。
日本ではあまり馴染みがない光景ですが、イギリスの街には地域に根ざした製本所があり、家族が代々継いできた本の修復や新装をしたり、論文を製本したり、家族のアルバムを製本したりする文化があるそうです。
日本に帰ってきた村上さんは東京のデザイン事務所に勤めた後、デザイナー・製本家となり2018年に拠点を浜松に移され、今は みかわや|コトバコ を仕事場としています

写真 黑田菜月
製本家という仕事は日本では珍しい職業…。
で・す・が…
(小さな声で…)「え、自分たちの生活とは縁のない職業の人だよね…??」
そんな事を思った方も多いのではないでしょうか。
実際にjimottomall編集長タテイシが、誰かに村上製本さんのお話をする時に「キョトン?」とした顔をされる事は多々あります。
確かに『製本』という言葉だと縁が無さそうですが、『本』であれば生活に密着していますよね。
本と呼ばれるものはもれなく製本という工程がされているもの。そう思ってしまえば製本って生活に身近な存在なんです。

写真 鈴木陽一郎
製本というと日本では大きな製本工場、ネットで注文する印刷会社などと、デザイナーや印刷関連の仕事をしていないと遠い存在に感じますが、街で働く個人の製本家となると接点があるのでしょうか?
わかりやすい事だと本の修復をお願いできます。
「大事な本なんだけど表紙カバーが破けちゃった。どうしよう。」という事から、
「先祖代々受け継いだ本が傷みがはげしく読めなくなってしまった…」という事も。
予算と納期を相談の上、その本をどのように残していきたいのかを依頼者と相談して新しい形に生き返らせる。
こういう事は個人の製本家でないと、依頼できない事だと思います。


ピアニストの方から楽譜の修復のご依頼。
小学生のころからずっと使っていたという30年以上の年月を共にした大切な楽譜

依頼者と一緒に選んだクロスでハードカバーの表紙を作ります。
表紙は凹ませ加工をして、その部分に元のソフトカバーの表紙を貼り込みました。
本文の楽譜も背のカチカチの糊から解放されて以前よりも開きがよくなっています。
また個人の記念誌や家族のための写真集など、小部数の本は手作りで作成(1部から作成可能)。学生の方は論文やポートフォリオなどの製本依頼も可能です。
もちろん本屋さんなどで流通するような大ロットの本も制作してくれますよ。
何か本を作りたい、直したいときがあったら、相談してみたら解決の糸口が見つかるかもしれません。
村上製本さんは定期的に製本教室も開かれています。
製本と一言で言っても、和綴じ、上製本、クォーターバインディング製本、リング製本…世の中にはまだまだ書ききれないほどの製本技術があり、自分の興味のある製本技術を学ぶ事ができます。

遠州綿紬を使った上製本 写真 鈴木陽一郎

和綴じ 写真 黑田菜月

クォーターバインディング 写真 黑田菜月

リング製本 写真 鈴木陽一郎
製本教室では自分の手で製本をイチから行うことで、あらためて本の魅力に気付かされます。
本屋さんに行った時に、どのように製本されているのかチェックしてしまうのは製本教室の"受講者あるある"ではないでしょうか。
本作りはスローペースな仕事と思いきや糊付けなどテキパキ作業する工程も多く、アタフタする受講者を見て「肩に力がはいってるな〜…。おっ、解きほぐれてきたなぁ〜。」と観察するのが楽しいそう。フフフ悪い趣味ですねwww
同じ種類の製本をしていても、皆さんそれぞれのリズム感覚や、手先の動きに個性があるらしく、毎回のように発見があるそうです。。
出来上がった本はOne and Onlyな大切な宝物。
この本をどうやって使おうかなぁ〜とか考えながら、本作りを体験してみませんか?

写真 黑田菜月
村上さんに製本教室を行う意味を聞いてみました。
「本づくりのハードルを下げたいんです。例えばパンやクッキーを家で焼くように、家で本がつくれたら、自分だけの本とか自分のオリジナルマンガとか作れちゃう。そんなの面白いじゃないですか。」
確かにそんな事ができたら面白そうっ!!
自分で手作りした子供のアルバムとか生涯の宝物になりそうですっ!!
複数人で行う"街角製本教室"の6月までの回は既に定員に達してしまいキャンセル待ちになっていますが、個人レッスン(日程や内容は要相談)は随時受付、7月からの"街角製本教室"は5月ごろから募集を募るという事です(SNSで告知されるそうです)。
興味のある方はぜひどうぞ~。
村上製本さんのチャレンジは、手作業と機械作業の融合。
機械の得意な "大量生産できる力" と、手作業が得意な "融通の効く利点" を融合させて、今までにない製本にもチャレンジされています。
たとえば安藤智さんの犬の油彩画集『DOG DOG DOG DOG』。
わんこがペロって舌を出しているのが印象的な画集だったため、本文も表紙をペロっと飛び出しているちょっと変わった製本です。
こうした加工は機械作業だけではできなく、手作業で行うには発注量も多かったので、試行錯誤をしながら機械と手作業の工程を横断してこのような本ができたそうです。

製本家であり製本マニアの村上亜沙美さん。
本についてお話ししているとずっと本の話をしてしまうように、jimottomall編集部も村上さんの話をすると止まらなくなってしまいます。
製本に対してのこだわり、製本の材料などなど。お伝えしたいことはいっぱい!!
本に興味のある方は、村上製本さんとお話をしてみたら更に本が好きになっちゃうかもしれませんね。(急がしい時も多いので、お話する時間がとれるかはタイミング次第と思いますが…。)
地元を拠点にする製本家。
少しでも身近に感じていただけましたでしょうか。
これを機に製本ということに興味を持ってもらえるとうれしいです。

写真 黑田菜月
次回はみかわやコトバコのおやつ係。おやつの紀行さんを紹介したいと思います。
どうぞお楽しみに〜♪
みかわや|コトバコ
〒430-0949 静岡県浜松市中区尾張町126−1
https://mikawaya-kotobako.com/
※それぞれの店舗の営業日は違います。事前にHPをチェックしてください。
村上製本
Asami Murakami ▶︎ http://asamimurakami.com/
Shop ▶︎ https://shop.asamimurakami.com/
instagram ▶︎ https://www.instagram.com/murakami_bindery/